商社の仕事人(52)その3

2018年04月18日

トラスコ中山 松井 周

 

次代の商流を創り、

会社の強みを売る

 

 

自分なりに商品を仕入れホームセンターに提案する

岡山支店で2年目を迎える頃から、松井は自分で仕入先を探し、会社がそれまで手がけていなかったような商品もホームセンターに売り始めた。なかでもベッドや健康器具などはよく売れた。岡山支店だけでなくホームセンター事業部全体が、この頃は多種多様な商品を販売して大きな売上を得ていた。

「先輩たちのような人間関係を築くには時間もかかります。そこで商品力、分析力、提案力を高めて、たとえ付き合いが浅くとも買っていただける、そのくらいの人物になってやろうと考えていました。そして行き着いたのが、とにかく売上のあがる商品を持って行くことでした。今思うと簡単に売れるものに頼っていたのだと思います。メインであるプロツールの分野から逃げていたんでしょうね」

何千万円もの売上につながった商品もあったが、それも一時のこと。いつまでも成績を支えてはくれなかった。ホームセンターの購買担当者から信用されるようになったのは、3年目に入ってからだったと松井は言う。

「このカテゴリーの売上を伸ばしたいとか、利益率が低いのを改善したいなど、お客さまの悩みは様々です。何を困っているのか。どんな問題を抱えているのか。3年目ぐらいからそこを聞き出して、お客様ごとの解決策を提案できるようになりました。当社は外回りの営業担当を“セールス&ソリューション”と呼んでいますが、やっとその意味がわかるようになりました」

その提案が見事にはまったのが、農機具のカテゴリーに入るチェーンソーの販売だった。冬の閑散期になると山陰地方や中国地方では、多くの農家が雑木を伐採して薪などにするためにチェーンソーを使う。松井が調べてみたところ、農家向けの機械類は協同組合などからの購入が圧倒的なシェアを占め、チェーンソーも例外ではなかった。しかも組合ルートでの購入は概して単価が高い。しかも協同組合が卸している地場の農機具屋さんが、跡継ぎがいないなどの理由でどんどん店を閉めていた。ホームセンターの売上拡大のチャンスが十分にあると松井は判断した。

「ホームセンター様の購買担当の方に、現在の状況を伝え中国地区のこの商圏、取りに行きましょうと提案しました。それまでこのホームセンター様では値段の安い輸入品のチェーンソーを扱っていましたが、農家の方々は、日曜大工とは違いプロなので性能のいい国産品でないと買わないということはわかっていました。それを売った結果、この商売は億単位の売上につながりました」

ホームセンターは全国に店舗を展開していることから、全国に松井の提案は波及していくこととなった。ホームセンターも新たな主力商品を手に入れた。この手の提案営業を、松井はいくつも成功させていった。

⇒〈その4〉へ続く

 


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