商社の仕事人(53)その6

2018年04月28日

ユアサ商事 川原 正

 

ゼロからの

海外市場開拓に挑む

 

 

人間として培ってきたすべての力が試される

川原は大学時代、アルバイトで貯めた金だけを持って、バックパッカーとなって日本を飛び出した。1年間休学して中国から東南アジア、インド、そして中東、ヨーロッパを回った。

「行く先々の現地の人たちと同じ食事をして、生水も平気で飲めるようになりました。そんな貧乏旅行でしたが、どこに行っても日本製品が必ずあるし、ジャパンと言うと知らない人はまずいない。日本はすごい国なんだなとつくづく思いました。これだけたくさんある日本の素晴らしい製品を、世界に売ってみたいと考えたのが、商社を志望した動機のひとつでもあります」

中国への挑戦は、まさにその夢を実現する絶好の機会だ。

ここでは日本以上に、人間関係によってビジネスが作られる。個人のブローカーも山ほどいる。いかにいい相手を捜し当て、人のつながりを築いていくか。人間関係を構築する力が問われる。さまざまな手段を使い、また一人の人間としての魅力がなければ難しい。自分がこれまで培ってきたすべてをぶつけようと川原は決意を新たにしている。

「今考えているのは、富裕層向けに日本製品をパッケージングして提案することです、色々なメーカーの製品を、顧客の要望に応じて組み合わせて販売することはユアサでないとできないことだと考えています。但し中国では建物の外側を飾るという概念すらまだ浸透していないので、例えば家の周りをこうするとかっこいいでしょとライフスタイルの提案からしなくてはなりません。

同じ商品でもどこに持っていくかによって、どれだけ売れるか、高く売れるかどうかが決まってきます。その最適な組み合わせを早く見つけて、また国内のときのようにバリバリと営業がしたいですね。会社としても収益を出すまであまり時間をかけていられないでしょう。早く海外に出たいと言っている後輩たちのためにも、早く成功させなければなりません」

これまではユアサの先人が作ってきたビジネスに乗っていた。今度は自分がビジネスを作り上げて、これからのユアサの柱にしたい。この思いを胸に抱きながら、川原は中国という広大なマーケットを掘り起こし続けている。

 

学生へのメッセージ

「就職活動とは、会社との出会いです。これだけいろんな情報が飛び交っていますが、そのすべてに目を通すことなどできません。会社訪問ができる数も限られます。出会えるかどうかは運にも左右されるとある程度覚悟を決めて、ここだと思ったところがあったら飛び込んでみてもいいのではないでしょうか」

 

川原 正(かわはら・ただし)

1978年鹿児島県生まれ。駒澤大学文学部社会学科卒。2002年ユアサ商事に入社。入社後半年で関西外構エンジニアリング部に配属。2011年4月から建材本部海外担当課長補佐。会社を経営する父親の背中を見て育ってきたので、中小企業の社長と語り合いながら人間臭く商売をしたかったというのが、ユアサ商事に入社した理由のひとつである。
「(取引先の)中小企業の社長は父親ぐらいの年代の方が多く、それぞれが一国一城の主です。だから自らの判断でものごとをどんどん決めていきます。そのような方々を相手に私が提案して、納得して採用していただくことにやりがいを感じたし、この会社に決めて間違っていなかったと今でも思います」

 

『商社』2013年度版より転載。記事内容は2011年取材当時のもの。
写真:葛西龍

 


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