阪和興業 山中淳一郎
まだ誰もしたことのない
ビジネスを求めて海外へ
原料を第三国で加工して海外企業に販売する
山中はそれから何度もオマーンへと足を運んだ。宗教の関係で生活習慣が違うことは知識として頭の中にあったが、なるほどこういうことかと納得するような現実を何度も目の当たりにした。
「断食の期間は昼間は食事ができないので、身体を動かす仕事はやりたがらない。そのために出荷が3か月遅れたこともあります。お祈りの時間だったという理由で約束の時刻に遅れるのも珍しくありません。また休日は木曜と金曜でこちらと違う。こうした習慣の違いは認めなければなりません。ただいろいろ理由をつけて半年経っても送られて来ない品物については、モノができてから改めて仕切り直しすることにしました。あれやこれやで、まだまだ採算が取れる商売にはなっていません」
オマーンやトルコでとれたクロム鉱石は、インドや中国でフェロクロムに加工される。それがさらに加工され、自国または第三国のステンレス・特殊鋼メーカーに販売する。こうした海外の販売先となる市場開拓をしなければならない。主なターゲットは中国や新興国などである。
「メーカーが直接フェロクロムを買い付けているケースもあるので、もう一工夫しなければ商社である我々の生きる道はありません。南アフリカで成功したのは、自社で出資して権益を確保したからです。今回もそのような商社機能がないと安定して売れていかないでしょう。どの鉱山と組めば有利かを見極めている段階です。船積みが半年も遅れる相手とは、パートナーとして付き合うのは難しいという判断に傾いています」
山中は、現地法人と組んで採掘するところまで関われないかと考えている。それがオマーンで果たして可能なのか制度を調査し、場合によっては採掘のためのパートナー探しもしなければならない。
「海外事務所と今そういう打ち合わせをしています。需要開拓にも飛び回り、〝お前、日本にいる意味はないよな〟とよく言われます(笑)。ずっと東京本社にいたので、そろそろ駐在に出たいなとも思っています」
⇒〈その6〉へ続く