商社の仕事人(56)その6

2018年05月26日

阪和興業 山中淳一郎

 

まだ誰もしたことのない

ビジネスを求めて海外へ

 

 

日本が買い負けないために商社連合を組む

原料調達に従事する中で、山中は日本が他国に〝買い負け〟をしている現実を感じている。日本のステンレス産業を支えるためには、安くて品質のいい材料を確保して安定供給する任務が商社にはある。だが中国のように政府が旗を振って買い付けに動くと、それに対抗するのは簡単なことではない。

「国として動けないのであれば、商社が動かなければなりません。日本で必要な原料を確保するために、商社とメーカーが一体となって投資するケースは多々あります。大きなところでは製鉄関係で鉄鉱石や石炭を確保したり、日本と韓国の企業が一緒にブラジルに出資したりする例もあります。大きなビジネスを展開する総合商社と比べれば阪和興業の投資額はそれほど大きくありませんが、ほかが手がけない案件であっても自分たちが担っていかなければならない領域はたくさんあります。商社は率先して投資案件を探していかなければなりません」

世界中でフェロクロムを巡るあらゆる取引をするという、今山中が進めているこのビジネスが、阪和興業の柱となるのはもう少し先になるだろう。山中は、今後ともまだ誰も手がけていないビジネスを仕掛けていきたいと語る。

「海外駐在に出るにしても、自分で開拓して、情報発信をして、新しい提案をしたい。それもまったく商売の材料も情報もないような仕事にひかれます。むしろゼロからの方が、今後伸びる可能性がより大きい。オマーンやトルコも、情報があったということはもう誰かが手をつけていたわけです。自分はゼロからの可能性を求めていかなければ。そう思っています」

とにかくなにもないところに行ってみよう。行けばそこになにかあるかもしれない。このようなフロンティアスピリットが山中を動かしている。それは海外に活躍の場を求める商社マンの典型的な姿なのかもしれない。

 

学生へのメッセージ

「(阪和興業は)実際に社内の雰囲気は明るいし、とにかく風通しがいいですね。部を統括する常務も同じフロアの中にいて、なにかあればすぐに相談に行けます。また小さな単位のチームでも結構大きな案件を手がけていて、責任ある仕事が与えられています。ひとくちに商社と言っても、その会社によってカラーが違います。商社では自分が仕事を作るというのは間違いではありませんが、各社が得意としている分野や業界があり、そこから派生する商売が中心となります。いろいろな商社を実際に見て、そこから興味がある会社を見つけ出してください」

 

山中淳一郎(やまなか・じゅんいちろう)

1979年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部英文学科卒。2003年阪和興業に入社。入社動機は「阪和興業の人と会っていると、おもしろそうな仕事をしているし、おもしろそうに仕事を語る。イキイキと仕事をしている雰囲気が一番伝わってきたからです」という。

 

『商社』2013年度版より転載。記事内容は2011年取材当時のもの。
写真:葛西龍

 


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