商社の仕事人(63)その3

2018年09月5日

CBC 小畑大輔

 

「無限の領域」を

「自由な発想」で冒険する!

 

 

まずは〝地球を任す〟という現場主義

ディビジョン内で新人・小畑が配属されたのは、海外拠点の光学情報機器に関するビジネスを集中的にコーディネイトする海外営業部だった。米国、アジア、欧州から新規ビジネスの商談や既存商品へのスペック及びコストに関する要望が、電話、ファックス、メールで24時間ひっきりなしに送られてくる。それを少数精鋭の社員たちが次々と対応していく部署だ。業務知識のレクチャーをひととおり聞き終えた小畑は、上司に呼ばれて爽やかに言い放たれた。

「きみには、米国から台湾までをあげよう!」

それは、まるで世界地図を見ながら領土を分割しているようだと小畑は思った。だが、ぐずぐずしている暇はなかった。担当地域の顧客たちは小畑が新人だろうがベテランだろうが関係ない。小畑は「全然できなかった」という英語を駆使して、すぐさま顧客とのやりとりを始めた。

「1年目なんて仕事は与えられなくて面白くないだろうと高を括っていたら、いきなりフル回転(笑)。上司や先輩に助けられ、時には怒られながら徐々に仕事に慣れていきました。でも研究職とはまったく違う世界がぱっと開けたので、とても楽しかったですよ」

こう語る小畑は、業務上不可欠な英語を学ぶため学校にも通い始めた。そして仕事をこなしながら知識を身につけ始めて半年経った頃、小畑に突然、海外出張というミッションが与えられた。行き先はロンドン。光学レンズの展示会に出品したCBCのブースで商品説明を行うのが主な任務だった。大学時代、物理光学を研究領域としていた小畑は「商品知識の飲み込みは早いほうだった」と言う。

このロンドンに始まり、小畑の出張先は、欧州各国、米国、東南アジア各国、韓国、台湾と、まさに地球全体を担当エリアとして任されたかのようにグローバルに広がっていく。

「当初は商品説明だけで、あとは現地スタッフに任せていましたが、そのうち自分で直接、お客様のところに出向いたり、仕様や契約などの具体的な商談をしたりするようになりました。世界各地に行きましたが、国や地域によって商習慣も様々です。欧米の顧客はスマートで、極端に言えばカタログと金額を出して合意したらその場でシェイクハンド。一方、アジアの場合、地域にもよりますが、商品の話はさて置いて、まずお酒でも飲んで仲良くなろうというところから話が始まるんです(笑)」

こうして入社から3年半が過ぎた。その頃、小畑に〝小さな事件〟が頻発する。まず新車を購入した話を同僚にしたところ、それを聞きつけた上司がやってきて〝なんで車なんか買うんだ〟と怒られたのだ。また、社内の海外研修制度に応募しようとしたところ、今度は選考前に上司に却下された。

「当時の上司からは、ビジネスマナーや宴席での商談などについてはけっこう厳しく教えられましたが、とても心が広く楽しい方で、仕事はイケイケ。〝どんどんやれ〟という感じでした。ですから、車への苦言や研修の応募却下は〝?〟だったのですが、まもなくその理由が分かりました」

それから数週間後、小畑のもとに上司から内示が告げられた。それは入社4年目・2003年4月付での中国駐在だった。

⇒〈その4〉へ続く

 


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