CBC 小畑大輔
「無限の領域」を
「自由な発想」で冒険する!
現地ニーズにアジャストせよ!
北京における小畑の任務は、現地での取引先開拓はもちろんだが、中国で初めての光学レンズ製造工場となる現地法人「希比希光学(北京)有限公司」のオペレーションだった。小畑が上海に赴任して以来、CBCは中国において営業拠点を拡充し、長年つきあいのあった現地の製造工場を買収。それまで日本で製造していた光学レンズを中国での現地製造に切り換えて、〝世界の工場〟として巨大な製造工場が中国全土に爆発的に増えていくのに対応してきた。その納入の一例が米国メーカーの世界的なスマホの製造である。そのスマホの製造拠点は中国のみ。そのため10年に1度のモデルチェンジの度にマシンビジョンに必要とされる光学レンズの需要は大きく伸びることが分かっている。こうしたアグレッシブ路線を追求した結果、売上は前年比2倍といった数字で伸び続け、光学レンズの業績は欧米市場を抜き、中国市場が最大となった。とはいえ、買収した製造工場がすぐさま〝日本品質〟の製品を増産できたわけではなかった。
「持てる技術をすべて移転するのはなかなか大変なことでした。ですから、日本から中国へ毎週、技術者がやってきて、品質向上に取り組みました」
こう語る小畑だが、自社の製造工場として操業を開始した当初は、芸術品とも言われる日本の精緻なものづくりをすべて中国で再現しようとしたわけではなかった。中国で求められる商品レベルをクリアすれば問題ないという、ある意味鷹揚な心構えでオペレーションを行っていたという。
「中国のマシンビジョンで必要とされるレベルは必ずクリアしなければなりません。しかし、オーバースペックとなっては困ります。ですから最初の頃は、中国のニーズに応えた製品を求める企業を探し出し、販売していきました。つまりニーズと合致した商品を提供することも重要なのです。もちろん現在では、中国の製造工場で、日本と同じ品質の光学レンズを作ることができますから、そうした心配は不要ですが」
2014年4月、新製品の開発と世界での販売戦略立案という新たなタスクを任せる人材として、東京本社から白羽の矢が立った小畑は、10年に渡る中国駐在から帰国した。いまや世界経済に圧倒的な影響力を与える存在となった中国が、その階段を一気に駆け上がっていく姿を、その中国に身を置いて目に焼き付けた小畑。常に環境に合わせて柔軟に対応してきた小畑は、その日々を振り返ってこう語る。
「中国ビジネスは変化のスピードがものすごく速いのです。日本製というだけで売れた時代もありますし、私が上海に赴任した当時は日本企業でも現地に合わせた製品を投入していく時代でした。そして今は、日本製品を使わないことをポリシーとしている企業もあります。その中でどうやって売っていくのか。これまでとは全く異なる考え方が必要となると思います。今までもそしてこれからも、その時代その時代に合わせてビジネスを展開する、アジャスト能力は商社パースンに必須だと思います」
⇒〈その6〉へ続く