商社の仕事人(64)その2

2018年09月18日

トラスコ中山 森﨑由美子

 

会社初の海外法人立ち上げに

奮闘した4年半

 

 

日本のビジネスモデルが通用しない!?

 プロツールナカヤマ(タイ)は、日本人2人とタイ人3人の5人体制でスタートした。

ビジネスを始めるための準備はすべて日本人2人でしなければならない。森﨑は主に営業と採用や教育などの労務管理を担当した。採用に関しては最初は人材紹介会社に頼み、その後はインターネットなどで直接募集した。日本語ができるタイ人スタッフがいたので、英語と日本語でも意思は通じたが、森﨑は週1回語学学校に通い、1年後には訪問先でもなんとかタイ語で会話ができるようになった。

取引先として想定していたのは日本に本社がある機械工具商の現地法人や営業所で、そのほとんどが日系メーカーに小売をしている。それまでタイには機械工具の卸をしている商社はなかった。

「日本でもお付き合いのある機械工具商がほとんどなので、私たちがタイでも日本と同じように在庫を持って当日か翌日には納品できると聞いて、それならありがたいと歓迎してくれました」

ところがいざ始めてみると、予想とは裏腹にほとんど注文が来ない。機械工具商はこれまで通り日本の親会社から輸入したり、現地で工具を購入する。それでもすぐに困ることはないからだ。1か月目は大幅な赤字。トラスコ中山のビジネスが海外で本当に成立するかどうかという厳しい現実に直面した。しかし森﨑に焦りはなかった。

「日本と同じサービスがタイでも受け入れられることは確信していました。でもそれには当社の物流システムがどれだけ便利かを実際に理解していただかないといけません。そこまで行き着くには課題がたくさんありました」

まず在庫数を拡大して即納できるアイテムを増やす必要がある。ウェブでの注文受付も、タイ独自のシステムを作った。価格をタイバーツでも表示し、現地の在庫状況が見られるようにした。1年後には日本での在庫数も表示して、取り寄せ品についても日本の本社に問い合わせずにタイ人がタイ語ですべて直接注文できるようにしていった。

タイでの在庫は最初3000アイテムほどだったが、4年半後に森﨑が日本に戻るときには 約3倍の1万アイテムになっていた(2016年末には3万アイテムになる)。在庫を補充する船便も月1回から毎週1回に増えた。それ以外の商品は27万アイテム近くを常備する日本の物流センターから航空便で発送するが、それも週1日から週5日となり、休日以外は毎日届くようになったため取り寄せ品の納期も大幅に短縮された。

⇒〈その3〉へ続く

 


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