トラスコ中山 森﨑由美子
会社初の海外法人立ち上げに
奮闘した4年半
支店長となって、新たな挑戦はさらに続く
新たな職場となる沼津支店は外勤の営業担当が兼任の森﨑も入れて2人、内勤営業4人、倉庫に3人という中規模の営業拠点である。静岡県東部全域が担当エリアで、製紙工業のほか自動車、食品、医薬と最終ユーザーの業種はさまざまだ。
森﨑は以前に経営企画部に在籍していた時期もあり、日本の営業現場を離れてから8年近くが経っていた。上司としてのマネジメントの仕方も、タイのときとはまた違うはずだ。支店をまとめていくことができるだろうかという不安はあった。
「自分を隠しても仕方ないので、分からないことは素直に教えてもらうことにしました。皆トラスコ中山の社員なので共通認識のベースがあり、黙っていても仕事はきちんとしてくれます。あとは出来る限りメンバーとコミュニケーションを取り、働きやすい環境を作るのが支店長の仕事です。ですから月に1度は一人ひとりと面談をして、体調や仕事の状況を確認し、私からも伝えたいことがあれば伝えるようにしています。悩みがあるときはじっくり聞くので、話が1時間になることもあります」
また、職場環境を整えるのも支店長の仕事である。今まで沼津支店には倉庫のスペースが狭いためフォークリフトがなく、10トントラックが到着して大きな荷物を搬入するときも、人手で降ろしていた。だが雨の降る日にずぶ濡れになりながら作業をしているのを見たときに、森﨑は「これは買わないといけない」と決断した。
「働きやすい環境は、所員の能力を引き出し、業績の向上にもつながります。たとえ小さなことでも、ないのが当たり前だったのが使えるようになるのはすごく大事なことです」
倉庫が小さいから仕方ないと思わずに、できることであればすぐにやるのが森﨑流だ。
「でもきちんと説明せずに方針を伝えてしまったり、コミュニケーションが足りなくて相手が納得していないのではないかと反省することもあります。支店長になって2年近くになりますが、まだ足りないところがたくさんあり、逃げずにチャレンジし続けなければと思っています」
2017年春に、沼津支店は移転して富士支店となり、土地の面積は広くなるため在庫も増やすことが決まっている。営業エリアは今と変わらないが、新たな投資をするからには業績を伸ばすことが求められる。当然、プレッシャーはあるだろう。それでもタイでまったくゼロからの事業立ち上げを経験したことが、新たな挑戦の機会を迎えるたびに森﨑を支え続けてくれるはずだ。
学生へのメッセージ
「私は外国語学部で学んだので海外で働きたいと思っていましたが、トラスコ中山という会社そのものに魅力を感じて入社しました。その頃は国内事業だけだったので海外とは縁がなくなったかなと考えていましたが、運良く海外拠点の立ち上げメンバーに抜擢され、幸運にも恵まれてこれまで充実したキャリアを送ることができました。就職活動の期間は、たぶん人生で一番自分自身を振り返る機会になるはずです。そのせっかくの機会に、どんな会社で、どんな仕事がしたいかを明確にしないまま、なんとなく決めてしまう人が多いように思います。人生、何があるか先のことは分かりません。きちんと自分と向き合って、少なくとも自分で納得して決めた道であれば後悔しなくて済むはずです」
森﨑由美子(もりさき・ゆみこ)
和歌山県生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部卒。2005年入社。八潮支店、松戸支店で外回りの営業と内勤営業を経験した後、2007年10月に経営企画部人材開発課へ異動。その3年後に現地法人立ち上げのためタイに赴任した。
『商社』2018年度版より転載。記事内容は2017年取材当時のもの。
写真:葛西龍