商社の仕事人(65)その1

2018年10月1日

ユアサ商事 大城勇一郎

 

建設機械レンタル会社に、

あらゆる商品を売り込む

 

 

【略歴】
大城勇一郎(おおしろ・ゆういちろう)
1980年、沖縄県生まれ。2003年立教大学経済学部卒。リサイクルのベンチャー企業に勤務した後、2008年にユアサ商事に入社。

 

食品市場の建物の床に機械油が漏れた

豊洲新市場の建設工事が急ピッチで進められていた2015年夏のある日、大城勇一郎の携帯に1本の電話がかかってきた。その声は怒号に近いものだった。

「食品を扱う市場で建物の床を油まみれにして、どうするつもりなんだ!」

相手は、ユアサ商事が高所作業車を販売した大手の建設機械レンタル会社だった。

その現場では大きな冷蔵倉庫を建造していた。工事をする会社は建設機械をレンタル会社から借りて使う。ユアサ商事のクライアントは最終ユーザーとなる建設工事会社ではなく、建機のレンタル会社だ。油が漏れたのは大城が納めた高所作業車からだった。

「えっ、またですか。すいません、すぐ伺います」

なぜかうれしそうだ。焦る様子もなく、大城はこう応えて、現場に急いだ。

この高所作業車の製造元は米国メーカーで、中国に工場がある。日本製品は車でも故障しないので有名だが、外国製の機械だとこうしたクレームが結構多い。そしてトラブルの解決やメンテナンスの要請はすべてユアサ商事の大城のところに連絡が来る。

「しょっちゅう連絡が来るので最初はどうなることかと思いましたが、今はもう大分慣れたので、ああ、またかと。電話で話を聞けば、現場がどうなっているかもだいたい見当がつきます」

こう語る大城は、自ら現場に行くこともしばしばだ。この日も油を拭き取って床を洗剤できれいに洗った。

「まずは申し訳ありませんという気持ちを示すために、すぐにその場に駆けつけました。小さな水たまりぐらいの染みができていましたが、床全体に機械油が広がってしまったわけではなく、大事には至りませんでした。建設工事会社の現場の所長は、わざわざご苦労さまとかえって気遣ってくれました。でもクライアントのレンタル会社の担当者はもちろん心配しているので、報告書を書いて翌日提出しました」

専門の技術部隊と一緒に行くこともあるが、「車やバイクなど機械をいじるのが好きで、つい夢中になってしまいます。取引先の方と話をしていても、機械が好きな人だと気持ちが通じますね」

機械の説明になると気づかないうちに熱心になっている。商社パーソンというより、メカ好きな子どもがそのまま成長したようだ。

⇒〈その2〉へ続く

 


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