商社の仕事人(65)その2

2018年10月2日

ユアサ商事 大城勇一郎

 

建設機械レンタル会社に、

あらゆる商品を売り込む

 

 

故郷の沖縄でレンタル会社の社長に建機を売り込む

大城は故郷の沖縄でユアサ商事に中途入社した。大学を卒業すると東京から沖縄に戻り、プラスチック類のリサイクル技術を持つベンチャー企業に就職した。志を共にする知人が経営していた会社だが、何年か経つうちにそのビジネスの先行きに不安を感じるようになっていた。

思い切って転職したユアサ商事の沖縄営業所は所長以下4名の小さな所帯で、大城はショベルカーやブルドーザーなどを建機メーカーから仕入れてレンタル会社に販売する仕事を任された。直属の上司は九州支社の建設機械部長で、支社がある福岡に出張することも多かった。

それまでと違って大きな組織だ。仕事の仕方も全く違う。ベンチャー企業では社長さえ説得すればあとはわりと自由に動けたが、ここではそうはいかない。沖縄の営業所長はいくつも仕事を兼務していて、建設機械の営業は実質的に大城1人だ。大城は最初からまずまずのスタートを切ることができた。

「地元なので初めは人のつながりを利用して、建機レンタル会社の社長を紹介してもらいました。社会人1年生ではなかったので訪問先で緊張することもなく、半年後にはそれなりの営業成績も出していました」

ただそれにつれて、大城は仕事の怖さをだんだんと感じるようになっていった。

売上が伸びれば、当然クライアントからの支払い額も増える。すると契約しても最終的に入金されないと大変なことになるという思いが頭をよぎるようになった。商品を納めてから支払い期日までの期間をサイトと言うが、大城の販売先を平均すると十数日間の入金のサイト遅れが発生していた。ときには億単位の支払い額になり、期日がずれ込むと全社のキャッシュフローに大きな影響を与えてしまう。

サイト遅れが発生すると、ユアサ商事の管理部門から大城に通知が来る。それをそのままクライアントに伝えたのではただのメッセンジャーボーイになってしまう。

「約束なので払ってもらえますか」

「少しぐらい遅れてもいいじゃないか。面倒なことを言うなら明日から来なくていいぞ」

下手な言い方をするとこうなってしまう。相手もわざと遅らせているのではなく、期日を忘れているだけなので悪気はない。それをわざわざ怒らせてしまっても何の解決にもならないし、商売としては大きなマイナスになる。大城は上司と相談しながら、どんな言い方をしたらいいかを考えた。

「すみません、会社がうるさいもので、なんとか期日に間に合わせてくれますか」

無難なのは、このように会社のせいにするやり方だ。それで「しょうがないな」と前向きに考えてくれるかどうかは、相手との信頼関係にもよる。

「こちらの事情も話しながら、次回からはお願いしますと説得していくのが基本です。そうやって意識を少しずつ変えてもらいました。それにユアサ商事と付き合うメリットもあります。沖縄では建設機械はメーカーから直に買うルートが一般的で、当社のほかに進出している商社はありません。商社だとメーカーを問わずに機械を選べるし、いろいろな新製品を紹介することもできます。建設業は泥臭い世界で、クライアントも通り一遍の製品情報ではなく生の話が聞きたい。私からは知りたいことがストレートに聞けるので、そこも評価して付き合ってもらっていたのだと思います」

大城は沖縄営業所に7年余りいた。その間に、支払い期日を守るのは当たり前というところまでレンタル会社の社長たちの考え方を変えていった。

⇒〈その3〉へ続く

 


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