商社の仕事人(57)その2

2018年05月29日

三谷商事 阿部俊朗

 

35歳でM&A担当部長に就任。

「本社を超える子会社」を

海外に求める

 

大手総合商社の内定を断った理由

卒業後の進路を選ぶにあたり、阿部は、いろいろな業種を受け、数々の内定を勝ち取った。しかし、順調な就職活動とは裏腹に逆に悩んでいった。そんなとき、相談したのは兄だった。プロとしての競技生活には1年でピリオドを打った拓朗は、帰国後、某大手総合商社に入社していたのである。

兄から商社という仕事の面白さ、やりがいを聞いた。そして、阿部本人も別の某大手総合商社からも内定を勝ち取ったが、ここへの入社を考えたとき、実はどうしても拭えない不安があった。

「兄からは商社の面白さと同時に、大企業が大企業であるゆえの弊害も聞かされていたんです。同期だけで100人から200人採用するからどうしても下積み期間は長くなるし、組織の図体が大きすぎるゆえのスピード感のなさとか、自分の声が上層部や組織に反映されないもどかしさにも耐えなくてはいけない。自分のような奴がそんな環境に身を置いて、伸び伸びとして実力を発揮できるのだろうか? そういう不安がありました。そう話していた兄も今はその会社を離脱し、別の会社に移っています」

そんな阿部のところに「面白い奴がいる」という噂を聞きつけ、タイミングよくコンタクトを取ってきたのが、三谷商事の名物人事課長さんだった。彼から社風から期待する人物像、キャリアプランなど、熱い語りを聞いた阿部は、この会社こそが自分の主戦場になりうるとの確信を持ち、内定取得後、すぐさま入社を決断、総合商社への断りの電話を入れる。それほどの確信を持てた理由は何だったのか。

「当時から、『将来は新事業開発や投資をやりたい』という希望はありました。だからその課長さんから、三谷商事の特長―――無借金経営で強固な財務体質を誇ること、それゆえに投資に対しても積極的であること、また少数精鋭の組織が若いうちから活躍できる土台を作っていること、そして、実際に若いうちから部門や事業を切り盛りしたくないか?―――等を聞かされ、心を動かされたというのは理由のひとつではあります。でも、もっと正直に言うと、ここなら自分を思い切り出せるという空気を、この課長さんの言葉の端々に感じ取れたからなんですよね。だから最後は直感です。自分自身の心の声に従おうと思いました。兄の反応ですか? 僕が自分の決断を伝えた時は、『そういうのもありだな』と言っていましたね」

⇒〈その3〉へ続く

 


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