商社の仕事人(57)その5

2018年06月1日

三谷商事 阿部俊朗

 

35歳でM&A担当部長に就任。

「本社を超える子会社」を

海外に求める

 

新しいミッション

教訓を活かす場面は2004年に訪れた。この年の4月、阿部は、千葉支店への赴任を命じられたのである。千葉支店は当時大きな課題を抱えており、それは販売エリアで廉売攻勢をかける地元のある企業(以後、A社)の存在である。結果、販売シェアを喰われていたのである。この状況を自身の営業力で打開し、シェアを取り戻すことが、阿部に与えられた任務だった。

もっともロジカルな解決方法は、ライバルであるA社を逆に協力パートナーにすることだった。阿部の目から見ても、A社のやっている廉売は無謀なチキンレースであり、短期的な売上は上がっても、長期的に見ればA社の体力を細らせていく。この会社を味方に引き入れれば、千葉支店だけではなく、業界すべてにとって、よい結果が得られるはずである。

A社を協力パートナーとするためには、キーマンはA社の社長である。阿部は、この社長から十分な信頼が得られれば、この解決法を納得してもらえるという自信があった。どうすれば信頼を得られるのか。社長に近しい人たちにアプローチを起こし、社員の話には耳を傾け、社長の息子とはプライベートで遊びに行くほどの仲にもなった。

こうした姿勢が実を結んだのか、阿部が信頼できる男であることが、周囲から自然に社長の耳に入るようになり、最後は社長自身と食事を共にする仲までになり、そこからはごくスムーズだった。

最終的に、過当競争による廉売合戦が収束した。これにより、千葉支店の業容は大幅にアップした。もちろん、A社との繋がりも密になった。阿部の当初の見込みどおりになったのである。

こうして千葉での2年間は、「もしかしたら会社からも、ここまでの成果は求められてはいなかったかもしれません」と阿部自身が苦笑するほどのハッピーな結末を迎えたのである。

⇒〈その6〉へ続く

 


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