商社の仕事人(57)その3

2018年05月30日

三谷商事 阿部俊朗

 

35歳でM&A担当部長に就任。

「本社を超える子会社」を

海外に求める

 

噛み付くのが文化

入社した阿部を待っていたのは、想像以上の風通しの良さだった。

こんなエピソードがある。

福井本社での約1か月の研修を終えた阿部は、予てからの希望勤務地である東京支店に配属となった。しかし、命ぜられた業務は別の部門。主力のセメント、コンクリートではなかった。だが入社してまだ半年に満たない身でありながら、「主力の部門でがんばりたいんです。コンクリートをやらせてください」と支店長に直談判。するとなんと、その申し出があっさりと認められたのだ。

「新人は上に噛み付いてこそ」という、この会社独特の社風ゆえのことではあっただろう。だが阿部にしても、根拠も信念もなしに単なるわがままを言ったわけではなかった。

というのも三谷商事は、阿部の入社以前からコンクリート販売で日本一のシェアを有していたが、阿部が入社した当時は、最大の市場である東京ではトップではなかったのである。だからこそ阿部は、「『国内シェア1位』というブランド力のアピール次第で、今後も伸び代はいくらでもある」と入社前から分析していた。したがって入社後すぐにでも、コンクリート営業に走りまわりたいと考えていたのである。

「自分ながら、生意気だったとは思いますが、主力の部門を更に伸ばしたかったし、僕は外に出て人とどんどん話したかった。大きな土台で仕事をさせてもらえればもっともっといくらでも部署に貢献できる、という自信がありました」

それが自惚れでなかったことは、コンクリート部門配属後の実績を見れば明らかだった。同期はもちろんのこと、社内の20代社員の中で、抜群の売上を達成し、人事にもその存在を猛烈にアピールしていた。

2011年現在の業界勢力図は、2位以下のシェアが以前と変わらず低迷であるのに対して、三谷商事は順調に新規エリアを拡大、わずか10年の間に、2倍以上も売上を拡大、シェア全国トップを揺るぎないものとしている。

⇒〈その4〉へ続く

 


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