商社の仕事人(68)その5

2018年11月16日

阪和興業 井川慎一

 

世界でwin-winを語る

コテコテ商売人

 

 

大切なことに国境はない

またも突然の辞令で大阪から東京への転勤。線材特殊鋼・チタン部線材特殊鋼国際課の一員となったのは2015年4月だった。形鋼は汎用商品を扱うビジネスだったが、線材特殊鋼は用途が広いので扱われ方は様々だ。専門性の高い世界で知識もないし、これまでのような情報合戦の文化もない。全く別の会社に転職したのではないかと思うほどで、全てを一から覚えなくてはならなかった。

それにも関わらず、異動1か月後に韓国へ海外出張に送り出された。2か月後には中国の長沙、重慶、武漢、上海を回った。

「それまで海外出張の経験はゼロです。とりあえず空港に行けと言われましたが、分からないことばかりで常にがむしゃらかつ汗だくでした。振り返ってみても、焦っていた事しか思い出せません(笑)」

その後も繰り返し海外出張に出向いているが、試行錯誤するうちに、海外の仕事でも情報が肝だということが見えてきた。海外には海外の情報合戦があったのだ。販売先の国情報を集めるのは当然だが、仕入先の情報を世界各地に伝えなければ、ビジネスをスタートさせることができない。

「駐在員も特殊鋼やチタンという材料は馴染みが薄いし、仕入先の情報をあまり持っていません。その人たちに動いてもらうには、自分で勉強して情報を渡さなければなりません。逆に仕入先は、どんな相手に商品を売るのか知りたがるので、現地の駐在員やスタッフから聞き出し提供します。正確な情報をタイムリーに伝えるのがポイントです。そう考えると大阪の条鋼建材第2部にいたときと、自分の立ち位置としては変わらないのかなと思います」

以前は大阪の社長を相手にしていたのが、今度は駐在員や現地スタッフ、そしてその先にいる現地顧客が井川にとっての『想いを伝える先』となる。コテコテの大阪商談ではなくても、自らが間に入ることで、仕入先、販売先双方にwin-winと感じてもらえるような仕事をするという点では同じ。自分の想いを伝え、それにふさわしい情報を提供し続ける。国や文化を超えても変わらない大切なものが、井川には見えていた。

⇒〈その6〉へ続く

 


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