阪和興業 井川慎一
世界でwin-winを語る
コテコテ商売人
常識に負けるな
線材特殊鋼国際課では、世界のどこにでも案件を見つけてはチャレンジしていく。その中で井川が今最も注目しているのは、経済成長を続けるベトナムである。
阪和全体では食品や化成品などを含めて様々な商売をしている国だ。既存の販売先だけではなく、マーケティングを通じて新規客を見つけては現地の駐在員やスタッフに訪問を依頼する。そこで得られた情報を今度は仕入先にフィードバックするというやりとりを続ける。
もちろん井川自身も頻繁に現地に飛ぶ。ホーチミンとハノイにある現地事務所のスタッフと片道3時間のガタガタの田舎道を走ったり、携帯の電波も入らない場所にも足を運んだ。
「新しいビジネスになるのでは、という期待感はいつもあります。そんなワクワクすることがなければ、プライベートの旅行では絶対に行かないようなところばかりです(笑)」
人口も増え続け、平均年齢も若い。鋼材消費量は昨年東南アジアのトップに躍進した。また最近では、ベトナム政府が輸入鉄鋼製品に対してセーフガード措置を発動した。それに伴いチャンスが生まれてきたと言う。
「まだまだ価格優先のマーケットであり、世界の工場たる中国の競争力が断然です。高い日本材はいらないという現地の常識を変えるのは難しく、買い手が求めていないなら無理だと帰ってきてしまう人が多いのではないでしょうか。しかし質の良い日本製品を使えば、中長期的に品質クレームも減り、買い手のブランド力も上がるので、きっと喜ばれるはずです」
真摯に真剣にメリットを語ることで、相手も納得し商談が成立する。セーフガード措置により中国材との価格差が縮まった日本材に切り換えれば、あなたの会社は伸びると説得したのだ。井川の想いに口を開いた相手側の条件は、相場変動に大きく左右されない安定品質、安定供給だった。井川にしても、長く取引を続けたい。こうして互いの想いも利害も一致した。
⇒〈その7〉へ続く