商社の歴史(6)

2017年02月16日

「商社」の歴史は「近代日本経済」の歴史

みんなの商社

◆リーマン・ショック

平成20年9月、サブプライム住宅ローン問題に端を発した米国住宅バブル崩壊を受け、米国大手投資銀行リーマン・ブラザースが破綻。この出来事が世界金融危機、そして世界同時不況の引き金となり、「リーマン・ショック」と呼ばれることになった。日本の金融企業はサブプライム住宅ローンの直接的な影響を受けはしなかったが、世界中の余剰資金が円買いへと集中したことで超円高となり、輸出産業が大打撃を受け、世界同時不況の発信国であった米国よりも、むしろ日本の国力の衰退が顕著となった。

こうした状況の中、総合商社は、かつての口銭ビジネスから資源・エネルギー分野へと収益構造を大きく変化させてきた。ロシアでの石油・天然ガス、アフリカでのアルミニウム、ニッケル、天然ガス、ブラジルでの鉄鉱石やバイオエタノール、中東での天然ガスや発電事業などがその代表的な事業だ。これらは、リーマン・ショック後の世界同時不況の中で一時的な資源価格の暴落はあったものの、その後、資源の国際的な奪い合いによる価格の高騰もあり、平成22年から、財閥系総合商社は、過去最高とも言える空前の売上げを叩き出した。なかには資源・エネルギー分野が純利益の7割前後を占める総合商社もある。

このように資源・エネルギー分野の収益構造に占める存在感は依然として大きいのだが、収益構造の偏りは経営上の命取りとなる可能性もある。そこで各商社とも純利益のバランスシートの健全化を図るため、資源という「川上」から、製品製造の「川中」、さらに流通・販売の「川下」までのバリューチェーン(価値の連鎖)の構築・展開を図っている。

このバリューチェーンは、金属資源・エネルギーから食品まで、あらゆる分野で進んでいる。たとえば、鶏肉のバリューチェーンの場合、川上は鶏の餌の原料となる穀物の集荷や販売、川中では養鶏や精肉を行い、川下ではフライドチキンや焼きとりなどの製品となり、生産管理と販売を行うのである。ただし、そのすべてを商社が直接行うのではなく、川上・川中・川下のそれぞれの事業会社に出資し、それら事業会社が利益を上げることで、その配当などの利益を得る。つまり、情報・ネットワーク・金融などの総合力を武器とする商社らしく、連鎖させた事業投資という形で新たな収益モデルを作り上げつつある。

 

⇒〈7〉へ続く


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