商社の仕事人(20)その1

2017年05月22日

CBC 野澤大地

 

研ぎ澄まされた〝嗅覚〟で、

未来のビジネスを切り拓け!

 

 

【略歴】
1980年東京生まれ。生産工学部卒。2003年入社。「Life Products Division Fine & Healthcare Department(原薬・中間体Group)」に所属。

 

入社2年目、自ら掴んだ海外出張

ポーン!
シートベルト着用サインが点灯し、機体は高度1万フィートからゆっくりと降下を始めた。
眼下には5大湖の1つ、ミシガン湖の雄大な湖面が広がる。
その上空を繰り返し旋回しながら、機体はシカゴ・オヘア空港を目指して少しずつ高度を下げていく。

「いよいよアメリカ上陸か…」

湖岸の大都市シカゴの街並みを見下ろしながらつぶやいたのは、「開発型創造商社」として名高いCBCの入社2年目の社員、野澤大地である。

1925年に化学品の専門商社として創業したCBCは、ニューヨーク、ロンドン、香港に現地法人を設立した1970年から海外進出を加速。商社のネットワークと営業力を一気にグローバル化させるとともに製造拠点をもグローバル展開させることで、トレーディングとマニュファクチャリングという2つの機能を世界各地で効率的に連携させることに成功し、著しい成長を遂げた商社である。「健康」「安全」「利便性」の3つをキーワードとするその事業領域は、医農薬・食品、化学品、樹脂・電子材料、IT関連、自動車関連、セキュリティ機器、ファッションなど幅広く、現在、世界中のニッチマーケットにおけるリーディングカンパニーとも目されている。

このCBCで野澤が所属しているのはライフ・テクノロジー・ディビジョン(現ライフ・プロダクツ・ディビジョン)。医薬品の有効成分とされる原薬や医薬品製造プロセスに不可欠な中間体をはじめ、化粧品・食品・飲料・サプリメントなどの原料、医療機器、農薬などを専門に扱う部署である。

2004年4月、CBC入社2年目を迎えた野澤は、日本から11時間半のフライトを終え、初めてアメリカの地を踏もうとしていた。野澤がはるばるアメリカまでやってきたのは、野澤自身がCBCに入社して初めてゼロから立ち上げた案件の正式契約を結ぶためだった。その案件とは、シカゴ郊外にあるサプリメント原料を製造するメーカーからの買い付けである。シカゴに向かう機内には、買い付けたサプリメント原料の日本での納入先となる化粧品メーカーの担当者が同乗しており、そのクライアントをシカゴの原料メーカーまで案内し、現地工場を視察した後、日本向けに生産可能な数量・納期などを確認して成約に結びつけるのが、この出張において野澤が果たすべきミッションだった。

ただし、いくら新規案件を立ち上げた本人とはいえ、入社わずか1年ほどの社員が、単独で日本国内のクライアントを伴い、初めての海外出張に行くというケースはCBCの歴史上、過去に例がない。しかも、アメリカにある現地法人のスタッフの協力も一切仰ぐことなく、である。

果たして行かせていいものか。あるいは行かせるにしても、誰か付き添わせるべきか――。
野澤の上司はすべてを承知の上で、野澤を単独でアメリカへと送り出すことにした。
上司は野澤を呼んでこう告げた。

「お前が初めて立ち上げた案件だ。まず自分1人でやってみろ」

それは、入社以来1年余り、ずっと「海外へ行って仕事をしたい」と言い続けてきた野澤の努力と願いが通じた瞬間だった。

「嬉しかったですね。正直に言えば、売上としては決して大きいとは言えない案件です。それにも関わらず、僕のことを信じて海外出張を許可してくれたのです」

この信頼を絶対に裏切ってはいけない――。
そんな思いを胸に、野澤は一路、太平洋を横断してきたのである。

〝当機はまもなく最終着陸態勢に入ります…〟

アナウンスが流れ、機体はいっそう高度を下げた。目指すシカゴはもう目の前だ。
しかし、この町で野澤を待ち構えていたのは、一人前のCBCパーソンとして野澤が乗り越えなくてはならない、初めての〝試練〟だった。

⇒〈その2〉へ続く

 


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