CBC 野澤大地
研ぎ澄まされた〝嗅覚〟で、
未来のビジネスを切り拓け!
ビジネスへの「嗅覚」
中国と日本の発展のために自分の能力を発揮したい。そんな気持ちを抱き、意気揚々とCBCに入社した野澤。だが、ほどなく野澤は自身の至らなさを痛感することになる。それは、CBCをはじめとする商社やメーカーには、製造現場での経験や知見に裏打ちされた高度なマネジメント力を備え、交渉術に長けたビジネス中国語を自在に操る社員が大勢いたということである。
「今まで自分が最も得意だと思っていた中国語と工学の知識が、CBCではごく当たり前のことでしかありませんでした。しかも、みんな非常にハイレベル。この事実にはとことん打ちのめされました」
しかし、これが逆に新入社員・野澤にはいい刺激となった。中国だけを向いていた野澤の瞳は世界に向けて大きく開かれたのだ。と同時に、野澤は業務に不可欠な知識を必死になって学び始めた。
「うちの部署で知っておかなければならないのは、まず日本国内の法律知識です。薬事法や食品衛生法など、国内で扱えるかどうかの法規制を知らなければ、何を輸入すればいいのかも分かりません」
また、CBCには通常の新入社員教育、そして、チャレンジ精神旺盛な先輩社員による日常業務のきめ細やかなフォローアップのほか、毎日、日常業務を終えたあと、新入社員たちが自主的に、そして自由に商材の研究などを行うという社風があった。それはCBCの新入社員たちの少しでも早く一人前の商社パーソンになりたいという情熱の表れでもあった。野澤ももちろん、商材の研究をしようと思っていたのだが、ある日のこと、先輩社員から「日々扱っている商材とはまったく関係ないことをやってもいい」と言われた。そこで、野澤は先輩社員の仕事を見様見まねで、国内の化粧品・サプリメント・食品メーカーが求める高い水準の原料を製造できる海外メーカーをインターネットで検索。サンプルを取り寄せ、独自のプレゼン資料を作り、上司の許可を得て、国内メーカーに営業をかけたのである。
「管理工学部出身ですし、たくさんの工場を見ていましたから、海外メーカーのホームページに記載されている製造工程図を見ればそのクォリティはだいたい分かりました。解説の英文も基本的に専門用語ばかりなので理解しやすかったんです」
この野澤の積極的な営業活動が奏功したのが、冒頭で述べたシカゴにあるサプリメント原料のメーカーから日本の化粧品メーカーに原料を卸す案件である。
「僕にはビジネスになりそうな匂いをかぎ分ける鼻があるんですよね(笑)」
当時を振り返り、野澤はやや自慢げに笑う。
だが、その海外出張は野澤が思い描いていたほど簡単なものではなかった。
⇒〈その4〉へ続く