「商社」就活体験記⑥

2018年03月12日

総合商社を目指すあなたへ

総合商社内定者が主宰する東北商社会に所属し、昨年三菱商事に入社した大川広典さんからご寄稿いただいた就活内定体験記を再掲載します。一昨年の就活を戦い抜いた先輩の生の声、ぜひご一読ください。

 

 

東北大学 大川広典

小学校3年生の時。両親に自分宛の手紙を書いてもらうという課題がありました。その手紙に書かれていたことを今でも鮮明に覚えています。黄色い便箋に青いボールペンで一行だけ。「世界を股にかける男になれ」と。あれから15年。両親からそんな言葉を受けた私は、あの日のメッセージのごとく、世界を股にかけるための道を選びました。総合商社で働くという道です。

 

◆「就職活動での最大の収穫は?」

「就職活動での最大の収穫は?」と聞かれれば、私は「内定」ではなく「自分自身を知れたこと」と答えます。個人的には、自己分析こそが就職活動の醍醐味だと考えています。なぜなら、これほどまでに自分の過去を見つめ直し、自分のことを知る機会は無いからです。今でこそ自分自身のことを理解できているつもりでいますが、「自分を知る」という行為は決して簡単なものではありませんでした。それほどまでに、自分自身を深掘りすることに時間を費やしてきましたし、それがなければ、自分が納得できるような業界、企業選びはできなかったと思います。自分のことを陸に把握できていない人間が、自分の将来を決めるような局面で有意義な選択をできる訳がありません。自分が過去に行ってきた ことを一つひとつ振り返り、「なぜあの決断をしたのか」「その時、自分は何を考えていたのか」ということを延々と問い続ける日々でした。なぜなら、あらゆる決断の裏には必ず意志があり、その意志にこそ自分の軸が反映されていると考えたからです。通学中も、ご飯を食べている時も、お風呂に入っている時も、常に自分のことを見つめ直していた記憶があります。時には、古いアルバムを見返しながら両親に話を聞いてみたり、初恋の思い出を振り返ってみたりもしました。冗談と思われるかもしれませんが本当の話です(笑)。辛い思い出を振り返ることは特に辛かったですが、そんな時も出来るだけ客観的に自分のことを分析しました。そして、「自分はこういう人間なのでは?」とヒントをつかむたび に、それを忘れないようにメモ帳に書き残しておきました。自分以外誰にも読めないような走り書きで埋め尽くされたメモ帳も、就活が終わる頃には四冊までになりました。「そんな真面目に自己分析なんかして気持ち悪い」と思われるかもしれませんが、私は全く恥じていません。他でもなく、自分の財産だと思っています。

 

◆「働く理由はなんですか?」

自己分析の重要さに気づいたのは、ある企業のインターンに参加した時でした。「ああしたい、こうしたいって言っているけど、大川さんはそもそも何の為に働くのですか?」と聞かれて、私は言葉に詰まりました。自分の意志で就職活動をしているのに、就職する理由をまともに把握していない自分がとても恥ずかしく思えたからです。そもそも、卒業してからの選択肢は就職だけではなく、進学、休学、起業、ボランティア、フリーターと様々な道があります。その選択肢の中で、そもそも私は就職を選ぶべきなのか? 自分にはもっとやりたい事があるのではないか? 私は、「卒業したら就職する」という固定観念を一回捨てて、まっさらな状態から自分のやりたい事を探しました。自問自答を繰り返した 末、自分がなんのために就職という道を選ぶのかがはっきりしてきました。私が就職を選ぶ理由、それは「地に足を着けて生きていくため」です。私にはまず、たくさんお世話になった両親から独立して、一人で生計を立てていく必要がありました。進学、休学、起業、ボランティア、フリーターと様々な選択肢があるなかで、合理的な就職という道を選んだのです。まあ、格好いい言葉を並べていますが、よく考えてみれば「そりゃそうだろ」とツッコミたくなるような理由です(笑)。単純で味気ない気もしますが、これが私の正直な気持ちです。しかし、就職できればどこでもいいというわけではありませんでした。

 

◆就職先を決めた軸

働く意味を考えて、自分自身を見つめ直した時に気づいたのは、「やりがいやワクワクを感じながら働きたい」という気持ちです。「ワーク&ライフ」ではなくて「ワーク=ライフ」となるような、仕事が楽しくて寝られなくなるような社会人生活を送っていきたいなと思いました。しかし、「ワクワク」、「やりがい」というのもまだまだ抽象的なイメージなので、もっとこれを掘り下げて、「どこでなにをする時にやりがい・ワクワクを感じるのか」という問いを自分に投げかけました。そしてじっくりと考えているうちに、段々と答えが浮かびあがってきました。最終的に言えば、これらの答えが業界・企業選びの大きな軸になっていくことになります。まず「どこで?」という問いに対しては「海外」 という回答が自然と浮かび上がってきました。ハーフということで幼少から異文化に触れてきたことや、留学や海外インターンなどの様々な国際経験を積んできたことがベースになっているかもしれません。常に海の外を見てきましたし、柔軟で視野の広い価値観を身につけたいと考えていました。次に「なにをする?」という問いですが、これが最も重要で、最も大切にしていた軸です。僕の答えは「人の信頼に応えようとする」です。他人からの信頼を勝ち取ろうとしている時、もしくは他人からの期待に応えようとしている時に最も力を発揮できると考えています。これは自分自身が両親に褒められて育ってきたというバックグラウンドが関係しているかもしれません(笑)。「よくやった」とか「協力してく れてありがとう」と言われた時が何より嬉しいし、自分を信頼してくれているからこそ、その人の為に誠実に実直に努力できる人間です。上記の二つの軸を一文にしてみれば、「世界を舞台に、人の信頼に応えていくような仕事をしたい」というものになります。これを聞いて、多くの人はこうツッコむでしょう。「それってほとんどの業界で出来るよね?」と。しかし、この二つの軸が自分の素直な気持ちであると確信していたので、この軸を基準にたくさんの社会人の話を聞いてみようと考えました。

 

◆人間臭いプロフェッショナルに

そうやって多くの社会人の話を聞いてみて、魅力的だと思った業界が二つありました。コンサルと総合商社です。もしかしたらまだまだ他にも魅力的な仕事はあったのかもしれませんが、この二つの業界であれば軸を満たしているし、何より、お会いした社員の方々に直感的な魅力を感じていました。メーカーのようにモノを武器にしてではなく、ヒトを武器にしてパートナーとの信頼を築いているからこそ、魅力的に映ったのかもしれません。人間臭いプロフェッショナルになりたいなと思ったのです。インターンなどのイベントも、この二業界を中心に参加しました。就職活動を通しての私の感想ですが、コンサルも商社も「社外のパートナーと一緒に仕事を作り上げていく」という観点では似たような仕 事だと思っています。しかし、実際に内部に触れてみて感じたことは、(一概には言えませんが)コンサルだと戦略や解決策を「提案」する所までしか携われません。提案のクオリティーは限りなく高いのですが、最終的にその提案を「実行」するのは、どうしてもパートナー側なのです。その意味で商社では、パートナーと共に作戦を練り、(リスクを取ることと引き換えに)自分自身もプロジェクトの「実行」に携わっていくことができるのです。私は就活の時に山登りに例えていました。パートナーをA君だとします。コンサルの仕事は正確な登頂ルートを考え出して事前にA君に伝えることです。自らの足を動かして一緒に山を登ったりはしません。一方商社だと、登頂ルートを考えつつ、自らも一緒になって目当ての山を登っていくのです。商社の方が自らの体力を使わなければなりませんし、A君との信頼関係やコミュニケーションもより一層大事になってきます。ケガをするリスクもあるし、道の途中でA君と対立するかもしれません。でもその分だけ、山登りの楽しさ・難しさを自ら経験できるし、なにより、パートナーと二人三脚で困難を乗り越えていくことで、「人として」成長できる環境があると思いました。最終的には、外資系コンサル数社からも内定を頂き、迷うことになりましたが、以上のような理由で私は総合商社を選びました。ビジネスだけに活かせる能力ではなく、一生の財産になっていくような「人としての魅力」を磨いていきたいと思ったのです。

 

◆総合商社へ。そしてその先へ。

ダイバーシティに乏しい田舎で育ったためか、幼少の時は自分がハーフであるということに違和感を抱いてきました。周りにいる友達とは同じようでどこか違うと感じ、時には知人から差別的なことを言われ自分のアイデンティティを見失いそうになることもありました。そんな時私を救ってくれたのが、冒頭で紹介した両親からの手紙だったと思います。「無理に型にはまろうとせず、一人の人間として生きていけばいい。」そんなメッセージが込められているように思えました。偶然か必然か、小学校三年生の時に親からもらったこの一言が、そのまま今の自分の夢になっています。「世界を股にかける人」とは、言語やプログラミングなど世界に通用するようなスキルを持つことではなく、世界中の誰に でも受け入れられるような人間性を持つことだと考えています。そしてその人間性を頼りに、世界中のあらゆる人と信頼関係を築いていくことが「世界で活躍する」ということだと思うし、少なくとも私が憧れるのはそんな人です。そんな人になりたくて、そんな風に成長したくて、私は内定先の会社を選びました。「そんな人」が、最も多い会社だったからです。三菱商事から内定を頂いた時、当初よりお世話になっていた社員さんから頂いた御祝メールにこんなことが書かれていました。————————————-選択の成否は、いつ誰にとって正しい選択なのか、それは何によって決まるのか、本当はとてもあやふやなもので決まってなどいないものだと思います。今回しっかりと悩んで進路を決めたことで「自分が決めた道だから」と腹を括ることができ、選んだ道の先で本気になって仕事に取り組んで、悩み、喜び、成長することで、「選んだ選択を」「自分の行動が」「結果的に」正しくしていくのだと思います。————————————-今、この記事を読んでいる方の中には、自分の進路に悩み、その選択が原因でいずれ後悔することを恐れている方もいるかもしれません。是非、本気で悩んでください。悩み抜いた末に見出した自分の軸は、道を見失いそうになった時の道標になってくれるはずです。私自身、まだ実際に働いてみたわけではないので、総合商社・三菱商事が自分にとって正しい選択だったのかはわかりません。しかし、その成否に関わらず、この選択を後悔しない自信だけはあります。それほど真剣に、妥協せずに捻り出した決断だからです。最後まで読んでいただきありがとうございました。ほとんど自分のことしか書いていないし正直恥ずかしくもありますが、これから就活を迎える方々に何かしら届くものがあれば幸いです。

 


関連するニュース

商社 2024年度版「好評発売中!!」

商社 2024年度版
インタビュー インターン

兼松

トラスコ中山

ユアサ商事

体験