「商社」就活体験記⑯

2019年02月1日

総合商社との巡り合わせ

この春、総合商社に入社する国際教養大学の白井優毅さんから、「みんなの商社オンライン」に自身の就活体験を綴ったレポートが届いた。白井さんは果たして「就活」をどう捉え、何を考え、どう行動して、内定を手をすることができたのか。

 

 

国際教養大学 白井優毅

人と人との縁を“赤い糸で結ばれている”と表現することがあるが、私と内定先である総合商社の一社との関係もそんな縁で結ばれていたのではないかと思うことがある。ある時点から、私は内定先に入社することだけを考えて就職活動をしていた。そして内定をいただくことができた。

 

◆内定先との最初の出会い

私の大学は在学中に留学することが義務付けられている。私は3年の秋から4年の春まで、カナダのトロント大学に留学した。海外生活は初めてではなかったが、ここでの学生生活は今までになく刺激的だった。世界中から集まってきた学生たちは「就職」などという狭い視野ではなく、将来自分がやりたいこと、世界の未来の変革を自らの言葉で語り合っていた。

そんな時、学内でキャンパス・リクルーティングが行われ、世界中からIT企業やコンサルティングファームが集結していた。内定先も参加していたが、総合商社からは一社のみであった。私は懐かしさもあり、惹きつけられるように内定先のイベントに参加し、そこの商社パーソンと話し込んだ。商社のことなど何も知らない私に対して、本当に親切に対応してくれ、商社の仕事のおもしろさ、大切さを広い視野で語ってくれた。商社にはこういう人たちが集まっているのかと思い、とびきりに格好いい方々であった。

 

◆外国と仕事をすること

幼少期にイギリスで生活した経験があり、国境を意識したことはなかった。高校時代にはグローバルなサマースクールに参加し、色々な国の若者と交流することができた。大学1年時には、今度は主催者としてスタッフに関わり、コンテンツ作りに奔走した。

また、大学2年時には外交を担う政府系機関のインターンシップに参加し、2か月間アメリカのワイオミング州で政府系機関の雑務をこなした。当時トランプ大統領がTPPから離脱することを宣言していたことを受け、インターン生という立場ではあったが、資料作りなどの関連業務に携わり、目まぐるしい日々を送った。

私は将来の仕事として、政府の職員として外国と交渉するということも考えていたが、努力したことの成果がわかりやすい世界で働きたい、現場で多くの人たちと関わりたいという想いが強くなった。その選択肢の有力な一つが総合商社だった。

 

◆内定先の特徴

4月に留学から帰ってきた私は、総合商社と言うより、内定先の1社への就活に突入したが、私が内定先と繋がっていたのだろうかと思う理由の一つが、家族だ。母は若い頃、貿易関連の会社で仕事をしていた。また父は、以前中国との貿易をこなしていた。私が初めて母に内定先への志望を告げると、母は「東京にグループの資料館があるから、尋ねてみたらどうか」とアドバイスしてくれた。そこには、内定先だけではなく、数百年に及ぶ当企業グループの歴史に関する資料が展示されていた。私は内定先の歴史を調べ、なぜ、これほど長く生存することができたのか、何をしてきたのか、日本にとって商社とはなにかを考えた。日本をリードするある会社の社長が、内定先について、「日本そのものだ」と語っているのを聞いて感銘を受けた。私も同じ想いであり、ここで仕事がしたいと強くそう思った。

 

◆内定先の社員

就活中、私の大学は歴史が浅いので卒業生が少ないこともあり、多くの社員の方にお会いした。驚いたのは会社の欠点をはっきり指摘する人もいることだ。各社員が常に自身の会社に問題意識を持ち、しっかりと学生にも伝えてくれる真摯な姿に好感が持てた。また、欠点を指摘しながらも、よく聞いてみると、仕事の楽しさや、同僚のユニークさなどが勝っていて、やはり、自分の会社が好きであると思えた。

また、どの人に会って質問しても必ず「君はどう考えるの?」と逆に聞いてくる。トロント大学の学生たちもそうだった。やみくもに問いかけてもダメなのだ。自分の経験から質問し、明確な答えを用意しなければ意志は伝わらない。それを元に議論はスタートする。営業の現場はその繰り返しだろう。この出会いを繰り返すことによって、人間力を鍛えられた気がする。

 

◆「ありがとう」と乾杯

面接は順調とは言い難いが、とにかく前に進んだ。総合商社はいくつもあるが、内定先以外には全く考えられなかった。それを志望する大きな根拠もあった。面接の質問は多岐にわたるが、「なぜウチを志望するのか」という問いに集約されていたと感じる。表面的なことよりも、これまでの経験や、会社の歴史などから、総合商社や内定先への思いを伝えた。とりわけ内定先については、「日本そのものだ」と伝えると、面接官からは「ありがとう」という言葉が返ってきて、思わず涙が出そうであった。 内定の通知を受けたあと、私はすぐに上海にいる父に電話した。スマホに姿を現した父はビール片手に満面の笑みを浮かべて「乾杯!!」と言葉をかけてくれた。

 

◆巡り合わせ

私は、総合商社はスポーツジムのようなものだと思っている。鍛えるべき部位の器具は全て揃っている。何を鍛えるのか、そのためにどの器具を使うのかは本人の判断にゆだねられている。鍛えた後どうするのかも本人の判断だ。資金も人脈も、アイディアを戦わせる、あるいは共闘できる人材も揃っているのが総合商社だと思う。

ただそこに身を置くにはやはり覚悟が必要だろう。私の就活は身を置く覚悟を決めるための道のりだったように思える。家族、友人、商社パーソン、多くの巡り合わせに感謝している。

 


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