三井物産 人事総務部人材開発室
稲垣貴大さん(5)
商社は学生のどこを見て、何を感じて内定を出すのか――。
その疑問に答えるべく、日本を代表する商社の人事部採用担当者にご登場いただき、最近の学生像や求める人材について語ってもらった。今回は、「人の三井」こと三井物産の人事総務部人材開発室で採用を担当する稲垣貴大さんである。
では最後に、これから就活に臨む皆さんに私の経験を踏まえてお話をしたいと思います。
大学院で素材の基礎研究を行っていた私が就活を始めたのは、修士課程1年目の3月でした。自分の周りにいた学生と比較するとあまり早い動き出しとは言えませんでしたが、自分がどういった人生を歩みたいのかじっくりと考え始めました。もともと、新しい技術やテクノロジーが好きで理系に進み、研究に携わっていたのですが、大学と大学院含めた6年間の中で、資金やノウハウがないために、新しい技術の普及が進まないという現実に直面しました。そして、実際にその技術が世界的に活躍するためには、技術を創るだけではなく、その技術を見極め世界に展開する役割が重要だと考え始めました。そこで段々とその役割を担う総合商社という業界の魅力に惹かれるようになりました。
私の就活を振り返って皆さんに伝えたいことは、「自分がやりたいことは何か」「それを達成する最適な環境はどこか」というこの2点を明確にすることです。企業というのは、自分が人生の中で達成したいことを実現するフィールドですから、皆さんも自分が本当にやりたいことや自分の進みたい方向性がどこなのかを考え、それに見合った企業探しをすることで、皆さんの描くキャリアを実現できるのではと思います。私は、この2点を確り考え抜いた上で、最終的に最適だと思えた業界が総合商社でした。また若手でも積極的意見を言える環境があり、また実行に移す機会があると思えた三井物産に入社を決めました。
今は入社前には思ってもみなかった人事という立場ですが、現在の業務を通し、私が持っていたのと同じような想いや考えを持ち活躍している社員と接する場面があり、学生の時の自分の判断は間違っていなかったと思っています。学生の時にはイメージできていなかったことで言えば、人事でもAIやビッグデータを使いもっと採用は進化させられるということです。今は採用という分野において何か新しいことを起こせるように、目の前の業務に取り組んでいます。
お話ししてきましたように、三井物産の社員は、常に「時代に先駆けた三井物産ならではのビジネスの創造」を念頭に置いた上で、一人ひとりが主体的、能動的に行動することを徹底して求められます。このような三井物産の企業理念やDNAに触れた上で、「何か面白いことができそうだ」「自分の想いや志に近いものを感じる」「自分の価値観にぴったりだ」と思った皆さん、セミナーや面接で是非お会いしましょう。
稲垣貴大(いながき・たかひろ)
1993年、名古屋市生まれ。名古屋大学大学院工学研究科卒。2018年入社。大学院ではマテリアル理工学専攻に進み、シンクロトロン光を用いた人工衛星の部品材料などの先端材料の基礎研究を行うが、ラクロス部の魅力的で尊敬できる先輩たちが入社していたことから、就活では研究職よりも商社に惹かれたという。
「研究室に籠もって研究に打ち込むよりも、世の中に埋もれているすぐれた研究の成果を世の中に売り出し、インパクトあるビジネスとして創出したいと考え、商社を志望しました。三井物産を第一志望にしたのは、セミナーで社員の方たちが上下関係や年齢差に関係なく気軽に話し合っていて風通しの良さを感じたためです。入社して数か月経ちますが、実際に誰もが自由に発言できる、とても風通しのいい会社でした。人事総務部への配属は化学品分野志望だっただけに驚きました。しかし、採用業務においても“挑戦と創造”の場は広がっているので、今は目の前の業務に精一杯取り組んでいます。2020年入社の採用活動には何か今までにはなかったものを創りたいと思っています」
『商社』2020年度版より転載。記事内容は2018年取材当時のもの。
写真:白井智