塩見健太・九州商社会代表ほか5名に聞く
2018年総合商社入社を目指す学生に向けて、九州商社会Finalセミナーを主催したのは、九州大学大学院生で三菱商事に内定している塩見健太さん。九州商社会の代表でもある塩見さん及び同会の一員で双日に内定している福森駿さん、また、来場している商社志望の学生の声を拾った。
※写真は九州商社会代表の塩見健太さん。座談会セクションにて。
〇まずは九州商社会の塩見さんと福森さんに話を伺った。
九州大学大学院の宇宙輸送システム研究室に在籍する塩見さんは、この4月から三菱商事への入社が決まっている。塩見さんが商社を志した理由とは?
「大学院では企業(自動車メーカー)との共同研究を行っていたのですが、自分の専門である宇宙領域とはまったく異なる業界とコラボして、コミュニケーションをとり相互理解を深めながら物事を完成形に向けて進めていく楽しさを実感しました。それは、なんとなく自分がやってきたサッカーにも似た、全員でゴールを目指すスタイルに好感触を得ました。また、学業成績はドベ(最下位)だったこともあり(笑)、最先端の研究を進めるよりも世界中の様々な業界の人たちとコミュニケーションを取りつつ大きな仕事を成し遂げられる商社が自分には向いているのではないかと思いました」
塩見さんも前年の九州商社会主催セミナーに参加したという。このセミナーの印象はどうだったのか?
「インターンシップは伊藤忠商事に参加していたのですが、このFinalセミナーではたった1日で七大商社が勢ぞろいしますから、1社1社を個別に見ていくよりも、それぞれのカラーを肌感として認識できました。ですから、昨年の今の時期、商社業界への志望はもう固まっていたのですが、九州商社会のセミナーで人事採用担当者や営業社員の方の話を聞くことで、自分なりに志望企業のプライオリティが決まりました。そういう意味でも、九州商社会のセミナーは、非常に貴重な1日だったと思います。今年参加していただいた学生の皆さんにもそうであってほしいですし、今後も、もっと商社について知っていっていただきたいと思います」
九州商社会の一員としてFinalセミナーの運営に携わった福森駿さん。工学部の学部生だという福森さんは双日一本の就活だったという。
「私の就職活動はとにかく双日のみ。他商社はもちろん、他業界も一切受けていません。こんなにも双日志望を強烈に推し進めたのは、学生ベンチャー企業で働いた経験が背景にあります。学生とはいえ、1つの企業としてどぶ板的な法人営業などを行ったのですが、そこで“ゼロから1を創る”という厳しさ、難しさを肌身に感じるとともに、その喜びや達成感は既存のビジネスや出来上がった環境で活動するのとは桁外れに大きいことも知りまし た。そう思って見回してみると、“答えは双日”でした。日商岩井とニチメンの合併以来、古くて新しい総合商社・双日は、非常に厳しい経営環境の中、かなり泥臭いビジネスを展開してきたと聞きました。その結果、ようやく準備が整い、今まさに攻めのビジネスへ転換する時期だと言います。2017年新卒入社の同期たちは100名ほどいるようです。攻める態勢に必要不可欠ということで、大幅に増えたのだと思います。九州商社会の中からも総合商社内定者30名のうち10名が双日でした。入社してみないと、どんな現実がやってくるのかは分かりませんが、たぶん双日に限らず、商社はどこも厳しい環境であることは間違いないでしょう。でも、それすら今はとても楽しみです」
〇パネルディスカッションの会場を訪れていた学生たちの中から4人の方に、ひと言ずつお話を伺った。
中国・上海市からの留学生・徐小雪さんは、九州大学の大学院で化学関係の研究をしているという。
「研究室に籠もるよりも、化学分野において、外の世界とコミュニケーションをとりながら新たな何かを生み出すビジネスにチャレンジしたいと思います。中国とのビジネスは意識せずに日本を拠点にグローバルに仕事をしていきたいと考えています。英語には自信があるのですが、筆記試験の日本語が少し心配ですね。商社には数多くの方がエントリーされると思いますが、面接に進むことができればチャンスがあると思います」
長崎大学の経済学部に学ぶ久世さんは、電力分野と食糧分野に携わりたいという。
「世界の国や人々のために必要不可欠なのが、電力と食糧だと思います。総合商社に入ってその2つの分野でビジネスを行いたいなと考えています。長崎大学出身で総合商社に入っている先輩はそんなに多くはありません。知っているかぎりここ数年で2人ほどです。ですから、私が頑張って後輩につなげたいと思います。パネルディスカッションの話を聞いてみて、財閥系3社と双日さんにとても魅力を感じました」
九州大学工学府の大学院生・大橋さんは、自分の知見を活かしたいという。
「私の周りの大学院生たちに商社はあまり人気の業界とは言えません(笑)。ただ、私自身はグローバルに活躍できる環境を備えた商社業界はとても魅力的に感じます。大学で培った知見を商社で活かして、世界の国々でインフラ関係の仕事ができればいいなと思っています。セミナー に参加してみて、伊藤忠商事はさすがに迫力があるなあという印象を受けています」
北九州市立大学の法学部に通う力武裕太郎さんは、大学の先輩が九州商社会の一員で丸紅に内定しているという。
「商社というのは日本独自の文化とも言える、すばらしい業界だと思います。今日、座談会やパネルディスカッションで社員の皆さんの話を聞いていると、総合商社はビジネスを行う上での中心的な存在でもありますし、また、様々な業界や企業から“頼られる存在”でもあるのだなと感じました。私自身、ずっと軟式野球をやっていて、みんなをまとめ、頼られる立場にいて、やりがいを感じていたので、総合商社の仕事にも似たような印象が受けました。そういう意味では、コーポレート部門にも、たいへん興味を抱きました。パネルディスカッションで興味をもったのは豊田通商さんです。パネラーの方が自分の仕事に誇りを持って話されているのが伝わってきました」
会場には例年どおり女子学生の姿も数多く、また、近年の傾向として理系学生が数多く参加している。総合商社から内定を受けている九州地区の学生の8割は九州大学の学部生及び院生だが、もちろん、その他の大学の学生たちにも平等にチャンスは与えられている。6月1日の選考開始まで、あと70日余り。筆記試験やエントリーシートでの選抜を通過して、ぜひとも面接の場で思い切り自分自身のアピールを行ってもらいたい。
取材・文=大坪サトル