日鉄物産 人事部・人材開発課
マティアス・パーガムズさん(2)
商社は学生のどこを見て、何を感じて内定を出すのか――。
その疑問に答えるべく、日本を代表する商社の人事部採用担当者にご登場いただき、最近の学生像や求める人材について語ってもらった。
初めて知った〝商社〟という業態
こうして4年生の秋にまず参加したのが、ハーバード大でのキャリアフォーラム。そこで出会った企業の一つが、日鉄物産です。続いて翌日、〝就活〟の本番といえるボストン・キャリアフォーラムに参加。改めてそこでまた日鉄物産の人事担当、今の先輩たちから詳しく話を聞くことができました。
日本での就職を考えるにあたって、日本企業についていろいろ教えてくれたのは、大学で履修していた日本語の授業の先生です。私は先生のアドバイスにしたがっていろいろと調べた上で、あらかじめいくつか志望先を絞り込んでいました。
その一つは、世界的に有名なゲーム会社。というのも私自身が実は、大会に出場するほど熱心な格闘ゲームのマニアだからです。キャリアフォーラムでも実際に応募してみましたが、職務や待遇などが希望にそぐわないことが分かり、それ以上の選考には進みませんでした。ゲームはやはり、デザインするよりプレイするほうが私には向いているようです(笑)。
ほかに応募したのは、化粧品や医薬品のメーカー。これは自分が今まで学んだことを活かせるのでは、と思ったからです。しかし実際に日本まで面接を受けに行ったりもしましたが、入社を決意するまでには至りませんでした。やはり研究中心の業務が、改めて自分に合わないと再確認したからです。
そんななかで強く印象に残ったのが日鉄物産、また商社という存在でした。皆さんご存じの通り、商社は日本にしかない業態です。私が商社について知ったのも、実はハーバード大でのキャリアフォーラムで日鉄物産と出会ったことがきっかけでした。
「こういうモノを作っている」というのがあるわけでもないし、いったい何をやっているのかよく分からない(笑)。最初はそう感じました。しかし日鉄物産のブースで話を聞いているうち、商社は常に柔軟でありとあらゆるビジネスに取り組んでいることが分かってきました。研究なら研究に絞って一つのことにだけ打ち込むというより、人生を通じていろんなことにチャレンジし続けていたい―。そんなふうに考える自分にとって、商社という業態に強く惹かれるものを感じたんです。
2回のキャリアフォーラムでは、日鉄物産以外の商社も来ていました。そのなかで当社に関心を持ったのは、人事の人たちが生き生きと仕事をしている様子が印象に残ったからです。日鉄物産なら、自分も意欲を持って自由に仕事ができるのではないか―。そんな企業風土を感じられたことが、入社を決意する決め手となりました。またワーク・ライフ・バランスについて、選考過程を通じて納得のできる答えが得られたことも、大きな要因です。
もちろん日本語ができるだけの私が、日本社会で〝社会人〟として適応できるのかどうか不安があったのも事実です。しかし当社の充実した研修制度について説明を受け、これなら大丈夫だと確信することができました。
海外駐在など惹かれる部分が多い反面、日本の伝統的な領域で自分がどこまでできるかは、まだ未知数です。しかし「とりあえずやってみる」というのが私のモットー。まずは目先の仕事に打ち込みながら、いろんな経験を積んでいきたいと思っています。
人事部員として伝えたい〝求める人材〟と〝研修制度〟
実は、私が日鉄物産の選考を進んでいた時は、人事部ではなく食糧事業本部の営業を希望していました。食糧なら私の大好きなお肉に携わる仕事ができる上、生物学の専門知識を活かせる仕事もあるかもしれません。しかし内定を頂いた時に、「日本に慣れるまでしばらく人事部で育てたい」と言われました。最初はさすがに驚きましたが、今は人事部でよかったと正直に思います。人事部は文字通り「人」と関わる仕事です。しかし「人」というのは大学時代の実験や研究と違って、なにをするのかを予想しにくくて、必ず論理的に動いてくれるとは限りませんので、人事部で勤めるには特に「人間性」が必要です。今まで理系一本道だった私にとって少し難しい概念ではありますが、人事部で自分の「人間性」を磨いていけば人間としてさらに成長できると思っています。
その上で、当社の人事部員の一人として、学生の皆さんへお伝えしたいことを述べたいと思います。
「鉄鋼」「産機・インフラ」「繊維」「食糧」の各事業分野で業界トップクラスの実績を実現している当社は、総合商社を目指すのでなく、あえてそれらとは一線を画した存在でありたいと考えています。それは当社が事業領域の広さのみを特徴とするのでなく、商材やビジネスを極めたプロフェッショナルたちが、四つの事業領域に集中し、高いシナジー効果を発揮することで成長を続ける企業だからです。
そんな当社が求める人材は、自分で考え、選択をして、その選択に責任を持って仕事に邁進していくことができる人です。
日鉄物産の事業領域は「衣・食・住」を支えるコア商材を扱うため、人々の暮らす所すべてにビジネスチャンスがあります。当社に入社する皆さんは、日本に住む約1億2000万の人々はもちろん、地球に住む約75億の人々を相手にビジネスをすることになります。言葉や文化、法律など何もかも異なる未知の世界で、大きな壁に当たることもあるでしょう。そうした場面で安易に「できない」「分からない」と口にするのではなく、まず自分で考え、学び、自分の考えを伝えてみる姿勢が求められるのです。
そんな思考力をともなった皆さんが世界で活躍するために、当社では充実した人材育成システムが整備されています。まず新人研修は入社1年目の総合職全員を対象に、配属部署で選定した行き先に海外出張する短期海外研修を実施。続いて入社3年目以上10年目以下の社員が対象の海外チャレンジ制度は、毎年応募・選抜を経て約十名程度が各事業本部の注力地域に1年間語学留学し、2年目には現地拠点で実務研修を行います。またこうした制度とは別に、日常的に海外出張を行う部署が多く、入社数年後には、海外駐在などのチャンスもあります。そのほか、国内勤務も含めたローテーションを通じて様々な経験を積むキャリアプランも用意しています。
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